理系白書

隣の研究室に置いてあったので、「理系白書」という本を読んでみた。
内容は理系人の恵まれない状況を次々とあげている、救われないものだ。
そんでまあ理系がんばれって感じの主旨である。
「文理両道」を掲げる私にとっては興味深いテーマだった。
11章中2章くらいはおもしろいかな。


まずは日本の文理格差について。
現在の日本の政界や官庁、企業のトップにに立つのは主に文系の出身者だ。
文理間の所得の格差は年収で40万円、生涯総収入で5200万円にもなるという。
昇進のスピードが全然違う様だ。
省庁では技官(理系出身者)の数が55%を占めるのに、次官級になれるのはわずか3%だ。
昇進・収入については不満が多いようだが、仕事や生活の満足度を見ると、理系でも低くは無いようだ。
自分の好きなことを続けることが出来るかららしい。
汚い作業着を着て(服装に興味が無い人が多いのも事実)、馬車馬の様に働いて(研究に陶酔する人が多いのも事実)、しかも給料が安い。
でも私はそれが嫌だからねー。


政界では、中国が共産党指導部のほとんどが理系出身者である。
胡錦涛は水利工学(河川中枢発電所)、温家宝が地質学(構造地質)専攻だ。
理系政権によって、共産主義の首を絞めかねないインターネットの普及を進めた。
インターネットを排除するのではなく、危険情報の流入に歯止めをかけるという実利的な道を選んでいる。
アメリカではサイエンス・アドバイザー(科学補佐官)をおいて、頻繁に科学技術ニュースや政策を大統領に進言している。
我ら日本は管直人鳩山由紀夫、あと志位和夫などが理系出身だ。
なかなか野党の主力なのはマイノリティー主義を持つ理系らしいかも知れない。


日本は科学技術立国を目指さなければいけない。
しかしヒトゲノム計画では先行しながらも、結局主導権は握れなかった。
技術移転による製造業の空洞化も懸念だ。
研究開発費や特許取得数などから算出した「科学技術競争力」は米国に続いて2位だ。
これから大切になるのは知的財産権保護と技術研究者の育成だろう。
大学の産学連携が出来るようになり、成果主義に遷移してきている。
そうなると基礎研究に予算が回らなくことが危ぶまれている。
基礎研究をやるものとしては困る。
そういう分野にこそ公共がお金を出すべきでは?
まあ紙と鉛筆で出来るのがいいとこでもあるんだが。